歩いている間、そしてバスに乗っている間、何度も肩がぶつかった。

 その度に私は……歩の手を握りそうになった。

 握ってしまえばきっとバレてしまう。

 歩を意識していることがバレてしまう。

 彼は人のもの。

 惨めだけど、もう自分の気持ちは認めずにいられなくなった。

 だからせめて、知られないまま忘れていきたい……。



 歩は心配をかけた両親へ一緒に謝ってくれた。

 今日の家庭教師は翌日に延期。

 部屋に戻って携帯を開き、六日前の歩のメールを開く。

〈言い過ぎた。ごめん〉

 絵文字も使われていないシンプルなメール。

 私はメニューを開き、数字の7を押す。

〈保護しました〉

 画面を確認して、カーテンを少しめくる。

 向かいの窓の左下には影ができていた。