私は浅はかだった。
歩から逃げ出したいがために、他の事は全く考慮していなかった。
家庭教師をサボることにで怒られたりダメなやつだと罵倒されることはあっても、まさか心配されるなんて。
予想外の言葉に、私は子供のように嗚咽を漏らしてグズグズ泣いた。
歩にあやされるように背中をさすられ、頭を撫でられる。
悠晴がどんな顔をしているかはわからない。
異常な雰囲気に、周りの通行人に見られているだろう。
「恵里、ごめん」
頭上から聞こえた声に情けない顔を上げる。
釣り上がっていた眉は逆に下がっていた。
「先週は言い過ぎた。恵里が怒るのも当然だった。ごめんな」
無言で首を振る。
謝罪の言葉を聞いて、心がふっと軽くなったのがわかった。
同時に自分がしてしまったことが、意地を張っていたことが、すごくバカらしく感じてきた。