「そりゃちょうど良かった。説明はいらないな。こいつ、返してもらうから」
歩は悠晴を通り過ぎて私の手首を掴んだ。
悠晴が何か言いかけたが、私の方が大きな声で反論する。
「離してよ! あたし、あんたのものじゃないし!」
力一杯手を振って逃れようとするが、力が及ばず逆により強く握られた。
街中で声を張り上げ、周囲の目がこちらに向いている。
それを気にすることもなく、歩は更に大きい声を上げた。
「うるっせーんだよバカ女!」
またバカって言った……。
私は悔しさが何倍にも増して、思いっきり歩を睨んでやった。
「カテキョなんてやめるもん! あんたなんてクビだもん!」
悔しさからか、目に涙が滲む。
それを見てか、悠晴が再び歩を引き剥がした。
歩は大きくため息をつく。
「そうじゃないだろ……」