その瞬間、肩に何かがガツッとぶつかった。

 驚いて振り向くと……そこには息を切らして私に腕を伸ばしている歩がいた。

「歩!」

 歩は私の顔を確認するなり、苦しそうに眉間にしわを寄せて膝を支える。

 そのままでは言葉も発せないのか、下を向いて呼吸を整えている。

 何が起こったのかわかっていない悠晴は何も言わずに立ちすくんでいた。

 しばらくして歩が顔を上げると、今度は私の腕を掴んだ。

「やだ、ちょっと、離してよ!」

 私を無視して歩は反対の手に握っていた携帯を開いた。

 少し操作をして、耳に当てる。

 私はもがいてみたが想像以上に握力が強い。

「あ、おばさん? うん、恵里いたよ」

 どうやらうちに電話をかけているらしい。

 マズいと思い、更に強く腕を振った。

 一瞬手の力が緩んだと思ったら、今度は腰を掴まれた。

 そのまま強く引かれ、見た目上抱き寄せられた形になる。