「その家庭教師ってさ、どんなやつなの?」

 ふと問いかけてきた悠晴は、微笑を浮かべていた。

「同い年の幼なじみなんだけど、それがまたイヤなやつでさぁ」

「同い年?」

「そう。南高なの。女子大生の彼女がいてね、カッコ付けるためにバイトとか始めたわけ」

 悠晴は相づちを打ちながらちゃんと聞いてくれた。

「その彼女に先週会わされたんだけど、それが超キレイな人でさ」

「へぇ。やるじゃん、そいつ」

「あたしもそう思ったんだけどね。私にはあんまりイイ人じゃなくてさ。それを伝えたら、あたしみたいなバカが好かれるわけないだろとか言われちゃった」

 思い出したら、涙が目に溜まってきた。

 気づかれないように拭う。

「何だよ、それ。かなりムカつく野郎だな」

 悠晴が八重歯を見せたままこう言った。

 そして、何かに気付いてふと後ろを振り返ったと思ったら、八重歯が口の中へと引っ込んだ。