プルルルルッ

 室内の電話が鳴り、マイクを握っていない私が出た。

「残り時間あと10分ですけれども、延長されますか?」

 悠晴をチラッと見る。

 楽しそうに歌っているようだ。

「延長、どうするー?」

「いっちゃえ!」

 マイク越しに聞こえた返事に頷く。

「あ、一時間延長します」

 電話を切って、次の曲を予約した。

 ふと思い出し、携帯をバッグから取り出す。

 ピカッ ピカッ

 着信があった旨を知らせるイルミネーションが眩しく光っている。

 意を決してパカッと開けば、画面には「着信あり 36件」の文字。

 そんなにかけて来なくたって、私の意志は伝わっているはずなのに。

 携帯を閉じてため息をついた瞬間、また震えだす。

 私はまたそれを無視してマイクを握った。

 着信元を確認することもせずに。