少し緩めのチェックのスボンを北風にはためかせ、私の前でピタリと止まった。

「どこ行く?」

「どこでもいい。勉強とは無縁なところに連れてって」

 悠晴は人差し指で鼻を掻きながら「うーん」と唸り、閃いたのかパッと表情を変える。

「カラオケ行こう。クリスマスの視察ってことで」

 提案されたところで私は戸惑った。

 出会って日が浅い男と、二人で部屋に籠もるなんて危険な気がした。

 でも、他に何をしたいという希望もない。

 私は笑顔で首を縦に振った。

 少なくとも25日まで……あと3日は危ないことはないと信じて。



 カラオケの部屋に入ったのは、伝票によるとちょうど五時だった。

「ねーねー、あれ一緒に歌おうよ。ミリヤと翔太のやつー」

 悠晴はデンモクをピッピ言わせながらはしゃいでいる。