そして、いよいよ火曜日。

「歩君の日なんだから、早く帰るのよ」

 という母の言葉に返事をしないまま家を出た。

 私が帰らなかったら、歩はどう思うだろうか。

 またとことんバカにされて、呆れられて、

「もうお前には付き合ってられない」

 なんて背中を向けられるだろうか。

 後味は悪いけど、もうそれでいい。

 投げやりな気持ちで迎えた放課後。

 私は家には帰らず、聡美と街へ出た。

 到着するなり聡美は待ち合わせていた彼氏と去っていき、私は悠晴との待ち合わせ場所へと向かった。

 時間はまだ午後四時半。

 待ち合わせていた時計台の広場へ到着すると、彼は携帯をいじりながら壁に寄りかかっていた。

「悠晴」

 呼びかけると顔が上がり、二本の八重歯を覗かせる。

「恵里ー」

 私立のオシャレな制服が駆け寄ってきた。