そしてこの上なく色っぽい顔をして、私の上に跨る。

「値段なんてついてねーよ。で? くれるの? くれないの?」

 低くて小さい声が、耳元で響く。

「はぁ……?」

 くすぐったくて、声に張りが生まれない。

「言っとくけど、それ以外だったらいらないぞ」

「じゃあ、しかたないから、あげる」

「しかたないからって何だよ……」

「だって他にはいらないんでしょ?」

 私は彼の顔に手を添えた。

 それに合わせて、またぐっと顔が近くなった。

「うるせーな。黙って俺のこと好きって言えよ」

「黙ってどうやって言うのよ?」

「とりあえず……黙らせてやる」

 口で口を塞がれた私は、黙って「好き」と何度も言った。

「聞こえた?」

 歩は首を横に振る。

「聞こえないから、もう一回」

 そうしてまた、塞がれる。