再び忍び足で部屋へ戻る。

 一歩一歩、ゆっくりゆっくり。

 たまにフローリングがパキッと鳴っては、肩をすくめてピタッと動きを止める。

 そして両親の反応がないことを確認しては、二人で胸を撫で下ろした。

 玄関から部屋に入るまでに、5分はかけたと思う。

「なんか忍者みたいで楽しくなってきた」

「バカ。バレて怒られるのは俺なんだよ」

 声が響かないように、コソコソ話。

 更に私たちはベッドに入り、口まで掛け布団をかぶった。

 これなら大丈夫。

 シングルベッドに二人も入ると、必然的に体が触れ合う。

 これから話をしようというのに、背中を向け合うのはおかしい。

 同じ方向を向くのも、何かおかしい。

 向き合って寝転がると、自然と私は歩の腕の中に納められた。

 もう、それだけで十分……。

「何の説明だっけ?」

 私の問いに、歩が答える。

「忘れたよ」