「あぁ、もう。やめたやめた!」

 諦めて携帯を放る。

 そして気を紛らすため、今日買った雑誌を広げた。



 最初のページから読み始めて、どれくらい時間が経過しただろうか。

 キリの良い所まで読んで、だるくなった体に血液を循環させるため、伸びをする。

 ふと思いついて引き出しを開けると、ジュエリーボックスに入ったピアスが目に入った。

 久々に手に取り、玉になったキャッチを外してみる。

「気に入ってるし……いいか」

 鏡を取り出し、左耳に装着。

 ピンクの光を取り戻した左耳を見ると、歩に対する感謝の気持ちが少し大きくなった。

 携帯を開き、時間を見ると23時半過ぎ。

 歩の誕生日が差し迫っている。

「別に12時ぴったりにメールしなくたっていいんだし……」

 呟いて、再び携帯を閉じた。

 明日にはメールも思いつくだろう。

 そう思って。