「お願い?」
「うん。明日、歩の誕生日でしょ?」
歩の誕生日……7月10日。
誕生日なんて、昔はお祝いしてたけど、もうすっかり忘れてしまっていた。
「だからね、恵里ちゃんからおめでとうって言ってあげてくれない?」
「え? 私から、ですか」
「去年、私だけお祝いしてもらっちゃって。別れちゃったし、今更連絡とか取りづらいから」
迷いはあったが、断るわけにも行くまい。
本当に伝えるかどうかは別にして、私は首を縦に振った。
「わかりました。伝えます」
その喫茶店で響子さんと別れ、私は帰宅した。
頭の中には、「恵里ちゃんからおめでとうって言ってあげてくれない?」という響子さんの言葉がぐるぐる巡っていた。
もしあの女の子が歩の彼女だったりしたら、私なんかがおめでとうって言ったって……。
メールだってし辛いし。