笑い合っていたとき、ふと響子さんが寂しい顔を見せた。
「ほんと、みんな歩みたいで……」
ポロっとこぼした言葉を、無視なんてできなかった。
「響子さん……」
「やだ、あたしってば元彼なんかに未練残しちゃって」
笑顔に戻ったと思ったら、グビグビとミルクティーのカップを空にした。
「あ、すいません。おかわりお願いします。恵里ちゃんは?」
「私はまだありますから」
響子さんが見せた歩への未練が私に重くのしかかる。
コーヒーさえ喉をスムーズには通ってくれなくなった。
「いつだったかな。私、歩のお母さんに小さい頃のアルバムを見せて頂いたの」
懐かしむように語る彼女は、笑顔。
「5歳くらいからだったかなぁ。幼稚園の制服とかもあったし」
「幼稚園か。懐かしいなぁ」
微かに残る当時の記憶をたぐり寄せる。
歩は大人しい子供だった。
「恵里ちゃんと写ってる写真ばっかりだった」
ドキッ
響子さんの笑顔が、少し怖くなってきた。