「え、元気ないですか?」
慌てて顔を押さえて、手のひらで少し顔を上げてみる。
それに吹き出した響子さんは、優しく笑った。
「うん。なんか寂しそうな顔してる」
「やだ。出さないようにしてたのに」
歩が関係しているだけに、響子さんには気付かれたくなかった。
私は顔を軽くパシパシやって、笑顔を作った。
「どうしたの?」
「いや、彼氏と別れちゃいまして」
「そうだったの……。でも大丈夫よ。恵里ちゃんならすぐ次の彼ができると思う」
「頑張ります」
正直、歩に未練タラタラで、次の彼なんて考えてもいなかったが。
響子さんはどうなんだろう。
新しい彼とか、できたかな?
「響子さんはどうですか? あっちでイケメン紳士捕まえられそうですか?」
「そうねえ。あっちの男の人ってみんな優しいから、目移りしちゃうくらいよ」
「よりどりみどりじゃないですか。いいなぁ」
それからしばらくは、英国紳士のエピソードで盛り上がった。