「やっぱり和食とかないんですか?」

「そうね。日本の醤油が恋しくてしかたないの」

「え? 日本のってことは、醤油って外国にもあるんだ……」

「そうなの。私も驚いた。でもね、味は全然違うのよ」

「へえ」

 外国の話は結構面白くて、日本人との文化の違いなど、テレビで見るよりも生々しい。

「日本食って、味が濃いのよね。あっちのご飯って薄味で、慣れれば美味しくなってきたんだけど、量が多くて食べきれないの。特に私、小食だし」

「わぁ。太りそう」

「でしょ? だから朝から街をウォーキングしたりして。でもね、ホストファミリーには痩せすぎよって言われてる」

「確かに響子さんは痩せてます」

 今まで歩という因果があって、こんなに打ち解けて話したことはなかった。

 響子さんはやっぱり良い人で、歩がベタボレだった理由を再確認したような気がする。

 私のせいで歩と別れることになったなんて……。

 今になって、罪悪感は何倍にも増してきた。

「恵里ちゃん、何だか元気ないけど、何かあった?」

 そう言われて初めて、無意識にため息をついていたことがわかった。