なのにあたし、一緒に歩いてたあの子があんたの何なのか、気になって仕方ないよ……。
「ねえ、歩」
「なに?」
「あの……さ」
「うん」
「やっぱいいや。続き教えてよ」
聞いちゃいけない。
卒業しなきゃ。
「なんだよそれ。気になるだろ」
「心が広いなら気にしないで」
「俺、狭いみたい」
私の心が広ければ、気にせずにいられただろうか。
あの子も、歩に触れたのか。
キスしたのか。同じベッドに入ったのか。
そんなモヤモヤを開放することはないまま、最後の授業は幕を閉じた――。
いつものように、母の合図で。
「二人とも、時間よ」
部屋にコーヒーの香りが広がった。