嫌なものを見てしまった。

 そんなこと幼なじみのあいつに思う必要はないのに。

 悔しい。

 なんて感じたり、する。

 ヴー ヴー ヴー

 地味なブレザーのポケットで携帯が震えた。

 カチッ カコカコ……

 静かな部屋でやけに音が響く。

〈家着いた?〉

 悠晴からのメールだった。

〈着いたよ。今日は楽しかった。またいっぱい話そうね〉

 これみよがしに気のある風な返信をする。

 別に歩に対抗したいってわけじゃない。

 歩がラブラブだからってわけじゃない。

 少し気に入った男にはいつもそうしてるから。

 ただ、それだけ。

〈俺も楽しかったよ。また話そう〉

 すぐに返事が来たが、私はこれ以上メールを続ける気になれなかった。

 再びカーテンをめくれば、窓の左に影があった。