制服を着たまま夕食を食べて、部屋に戻った。
カーテンをめくってみると、いつもの場所に影。
きっとあの子をバス停まで送って帰ってきたんだと思う。
今なら自分でもわかる。
寂しいと顔に出ている。
私は左耳のピアスを外した。
それをジュエリーケースにしまい、椅子に座って机に伏せてみた。
もうカチッと音を立てることもない。
飾りっ気のなくなってしまった私は、身も心も空っぽになった感じがした。
そして、6月29日。
歩の最後の授業の日――。
「お前さ、そこ先週もやったとこなんだけど」
「うるさいな。先週もやったってとこまでは覚えてるもん」
「やったことじゃなくて、やった内容を覚えて欲しいんだけど」
「わかってるってば」
こんな会話も、これで最後だ。
歩は外してしまったピアスに気付いているだろうか。