「恵里の場合、一兎を追って二兎引っかかって、どっちも手放したって感じでしょ?」

「そうなるのかなぁ」

「なるの。だからそんなに寂しそうにしないでくれる?」

 寂しそう。

 その言葉にドキリとした。

「うそ、寂しそうに見える?」

「見える。二股かけられてたあたしに失礼よ」

「はは、ごめん」

 寂しいだなんて、思ってない。

 ……フリをしていた。

 そうでもしないと、後悔の念に押しつぶされそうなのだ。

 自分でまいた種なのだから、強がっていないと生えてきた芽に耐えれそうもなかった。

「よし! 今日は私に付き合いなさい」

「いつも付き合ってんじゃん」

「いいから、カラオケ行くよ」

 それからカラオケに移動してたっぷり3時間。

 聡美と叫ぶように歌いまくった。