「恵里はマタかけてたわけじゃないんでしょ？ 彼氏は一人だったわけだし」
「そうだね」
「アイツはどっちとも付き合ってたの。しかもね、二股だって知らなかったのはあたしだけなのよ。あーホント信じらんない」
彼氏の二股が発覚して、別れてしまった聡美。
似通った状況の私たちの友情は深まる。
しかし聡美と悠晴が重なって見え、なんだか聡美にまで申し訳ない気持ちになった。
「二兎を追うものは一兎をも得ず、だよ」
私の言葉に、聡美が眉を寄せた。
「何言ってんの？」
「だから、二人と付き合おうとしたら、どっちの心も掴めないってこと」
聡美は更に不機嫌な顔になった。
「相手の女は、別れないって言ってたけど」
「え？」
「私がいるの知ってて、別れるの待ってたんだから万々歳でしょ」
世の中、ことわざがアテにならないこともあるようだ。
