類は友を呼ぶ。
こんな時に使う言葉でないのはわかっているが、私の悪い頭ではこんな言葉しか浮かばなかった。
悠晴を最後に見たあの日が暦でいう「友引」だったのだろうか。
「今月限りで家庭教師を辞めたい」
次の家庭教師の日、歩はお菓子を持ってきた母と向かいに座る私にそう言った。
「周りも部活を引退して、これからが受験の本番みたいなものなんだ」
退職理由は、こういうことだった。
「そうよね。大事な時期を邪魔するわけにはいかないもの」
残念そうにする母も、それでは仕方がないと首を縦に振る。
「恵里にはわかりやすい参考書を渡してあるから、それを見れば勉強できると思う」
ホワイトデーのプレゼントは、この時のための準備だったのだろうか。
そう思えるくらい、準備万端。
もらってから一度も開いていない参考書は、これから歩の代わりになりそうだ。
「それでもわからない時は、家も隣だし、いつでも教えに行くから」
歩は私ではなく母にそう言った。
きっと社交辞令。
歩はきっと、私が自分に質問なんてしないことを知っている。