向き合う二人は携帯をかざし合っている。

 おそらく、赤外線通信。

「終わった……」

 頭に浮かんだのは、それだけ。

 悠晴は次に進んでいる。

 私のことを、ちゃんと悪い思い出に出来ただろうか。

 ふと顔がこちらに向き、私に気付いた悠晴。

 少し驚いた表情以外は見せない。

 笑顔も見せなければ、嫌悪を露わにすることもなかった。

 私はそんな彼へ、にっこり笑顔を見せた。

「幸せになってね」

 そんな意味を込めて。

 そしてすぐに進行方向へと顔を向ける。

 言葉のないメッセージは伝わっただろうか。

 吐き出せていない色々な感情が、涙になって溢れる。

 私はそれをこぼさないよう細心の注意を払い、目的地へと急いだ。



 その日の夜。

 私は悠晴にもらったネックレスを外した。