あの時はイライラで頭に血が上っていたが、この頃になってやっと頭が冷えてきた。

 冷静になればなるほど、悠晴に申し訳なくなっていく。

 あの日、私には彼を殴る資格なんてなかった。

 彼にはどこにも非がない。

 ただ、私を思ってくれている優しい彼氏だった。

 裏切っていたのは私の方だというのに、いらないなんて言う権利はどこにもなかった。

 謝ろうと思っても、あのような態度を取ってしまった手前、自分からは連絡が取りづらい。

 いっそ私みたいな酷い女のことは嫌いになって、悪い思い出として笑い話にでもなればいい……。

 そう考えるようになった。

 ごめん、悠晴。

 酷い彼女でごめん。

 歩に浮ついたことはあったけど、悠晴のことも大好きだった。