すぐにドアが開く音がして、車内が照らされる。

 乗っているのは、女。

 そして開いたドアから出てきたのは制服姿の歩だった。

 そのタイミングで私は家の中へ入る。

 バタン

 ブロロロロ……

 車の去る音が聞こえた。

 ドク ドク ドク……

 心臓の音がうるさい。

 気付いてしまった。

 歩のキスシーンを見たのだと……。

「たっ、ただいまぁ」

 振り切ってしまいたくて、いつもより大きな声を出す。

 でも頭から離れてくれない。

 陰が伸びて、ぴたっと重なったあのシーンが。

 部屋に入ってまたカーテンを少しだけ開けてみる。

 パッと明かりがついた。

 歩も今部屋に入ったのだろう。

 ていうか彼女、いくつよ?

 車を運転できるんだから、年上じゃん。

 影が現れて彼が窓に寄ってきたのがわかった。

 咄嗟にカーテンから手を離す。

 ドク ドク ドク……