口論で勝負をつけようとしている二人。

 私が入り込む隙間は、なかなか見つからない。

 本人である私を無視して白熱していく二人に、だんだん嫌気が差してきた。

 この言い争いが、何だか滑稽に思えて、冷めてきた。

 バカじゃないの、二人とも……。

「お前、勉強教える度に恵里に言い寄ってたのか?」

「俺が誰に言い寄ろうと勝手だろ?」

「恵里以外ならな」

「俺は恵里が好きなんだよ。他の女に言い寄れるか」

「モラルのねえ野郎だな」

「お前彼氏だろ? だったら堂々としてろよ」

「んだとコラ」

 悠晴が歩に掴みかかろうとした時、私は二人を突き飛ばし、どちらにも一発ずつ平手打ちを食らわせた。

 パチーン パチーン

 晩春の夜空に、乾いた音が響く。

 やっと視線が私に向けられた。

 二人は驚いた顔をして、ぴたりと言い争いをやめた。