悠晴も後ろを振り向く。
不機嫌だった顔は、更に不機嫌になった。
「やけに遅いと思ったら、そういうことか」
歩もこちらにやってくる。
ビリビリと殺気のようなものが、二人から伝わってきた。
どうしよう。
「恵里、謝ることがあるなら、今ここでこいつに謝れよ」
「え? それは……」
悠晴の前で、言えるわけがない。
「俺に聞かれたらマズいこと? 何かやましいことがあるの?」
「やましいことって……」
やましいことがあるだけに、黙ってしまう。
そこで歩が口を挟んだ。
「お前の彼女だろ? 信じてやれよ」
悠晴の視線が歩に移る。
今にも掴みかかりそうなオーラが出ており、ヒヤヒヤする。
「なあ、恵里が何したかしらないけど、俺からも謝るわ」
「それはどうも」
「だからこいつが何したか、お前から教えてくれよ」
悠晴が歩ににじり寄る。
歩はたじろぐこともなく、堂々と立っていた。