「悠晴! どうしたの、こんな時間に」

 驚いた。

「来るなら連絡をくれればよかったのに。ちょっと用事があるから、部屋で待ってる?」

 彼は問いには答えず、顔は怒りの表情をしている。

「どういうことって、聞いてるんだけど」

 何に対して「どういうこと」なのかがわからない。

 よって、答えられない。

 彼はため息をついた。

「どうしてこんな時間に、あいつの家に行こうとしてるわけ?」

「ちょっと謝ることがあって。すぐ済むから、ね」

 釣り上がった眉は下がらない。

 八重歯も見えない。

 納得がいってないんだと、すぐにわかった。

「電話でいいだろ」

「それは……電話じゃうまく言えなくて」

 滅多に見ない表情が怖い。

 いつものケンカの時の顔とも違う、悠晴の怒った顔。

「どうして? 何を謝るの? あいつと何かあるの?」

 攻められ、返答に困る。

 ガチャ

 向こうの方でドアの開く音がした。

 出てきたのは、歩だった。