「えっと、だから……」

 それでもまごつく私を、歩はクスッと笑った。

「話しにくいなら、今からそっち行こうか?」

 謝るというのに、それはマズい。

 行くなら、こっちから行くのが礼儀ってもんだ。

「ううん、あたしが行く」

「わかった」

 電話を切って、部屋を出た。

 階段を下りると、ちょうど父がトイレから出てきたところだった。

「今から出かけるのか?」

 渋い顔をする父。

「うん。歩のとこ」

 そう言うと表情は穏やかになった。

「そうか。いってらっしゃい。ご迷惑かけないようにな」

「うん。行ってきます」

 靴を履いて、玄関を出る。

 門を開けて歩の家へと急いだ。

 その時……。

 ちょうど桐原家と西山家の間で、誰かに行く手を阻まれた。

「どういうこと?」

 そこに立っていたのは、悠晴だった。