十二月になってクリスマスのイルミネーションで飾られた街。
この日に出会った男はなかなか上玉だった。
「へぇ、悠晴(ゆうせい)っていうんだ。珍しいけどカッコイイね」
「だろ? 名字が田中で地味だからさ、名前はちょっと捻りたかったらしいんだ」
そう説明して八重歯を覗かせる。
私立のオシャレな制服を着崩した彼は、友人に悠と呼ばれていた。
彼氏のいる聡美は顔の良い悠晴にも靡くことはなく、
「彼氏いるから」
と番号の交換を断っていた。
結局この日は悠晴と話が盛り上がり、少し帰りが遅くなってしまった。
9時前にやっと家に着くと思ったら、到着する前に見慣れない車が歩の家の前に停まった。
歩きながらその車の中を見ると、運転席と助手席から陰が伸びて、二秒ほどぴたりとくっついた。