「別れを切り出したの、歩のほうだよ」
その一言に、体が震えた。
「え? どういうこと?」
春樹君は、その時の響子さんの話を詳しく聞かせてくれた。
姉貴、留学しても歩と別れるつもりはなかったんだ。
帰ってくる頃には歩も大学生だし、それからのあいつとのことも考えてた。
歩に留学のこと話しに行った日に、俺、姉貴に付き合わされて酒飲みに行ったんだ。
もう、ヤケ酒でさ。
姉ちゃんの恋愛事情なんてあんまり聞きたくなかったけど、酔っ払って話し始めたよ。
「あたし、浮気されてた。二股ってわけじゃないらしいけど、その相手のことが気になってるから、本当はずっと悩んでたんだって。ほんと、信じられない……」
もう大泣きで大変だったんだ。
浮気相手は、おそらく私だ。
話も聞かずに誤解して、勝手にキレたりして……情けない。
歩に申し訳ない気持ちが大きくなって、やけにストレスを感じる。