「恵里ー! お風呂入んなさい」

 一階から母の声が聞こえる。

 私はマンガを机に乗せ、風呂へと向かった。



 風呂を上り、冷蔵庫から牛乳を引っ張り出してグラスに注いでいたときのこと。

「恵里、あんたに家庭教師をつけることにしたから」

 母の言葉に私は危うく牛乳を溢れさせるところだった。

「はあっ? 何それ?」

 並々に注がれた牛乳を一口すすり、両親の元へと移動する。

 母は強気な笑顔で私を迎える。

 父はテレビを見たまま私のほうを向かない。

「あんた、期末も数学赤点だったじゃない」

 そこを突かれると痛い。

 一学期の期末はギリギリで、二学期の中間と期末は連続で赤点だったのだ。

「このままじゃ進級だって危ないでしょう?」

 おっしゃるとおり。

 だけど、急に家庭教師なんて言われても困る。