「これ、恵里が作ったの? 超嬉しい!」

 バレンタイン当日。

 私は前日に再び作ったガトーショコラを見て感動している悠晴の部屋にいた。

 彼の部屋は歩とは対照的で、派手なポスターが貼られていたり、学習机にはコンポが置かれていて、もはやCDラック化していたり。

 不自然に積み上げられたマンガ本や服など、私が来るから何とか片付けました感が否めない。

 それが悠晴らしくもあって、可愛く思えた。

「いただきます」

 行儀は悪いが、手で掴んで美味しそうに食べてくれる。

「うん、すげー美味い」

「よかった」

 この日にはもう歩の残した跡も消えて、色々覚悟はできていた。

 今頃歩も響子さんからチョコをもらっているのだろうか。

 二人の笑顔を想像すると、ズシンと胸の奥が震えた。

「恵里」

 悠晴のほうを向くと、強引に唇を奪われる。

 甘い味がした。

「俺、恵里も食べたい」