「嬉しいよ。バレンタインの代わりだろ?」

 照れくさくて顔が熱い。

「彼氏にあげるやつの練習よ」

「はは、でも一番乗り」

 カチャカチャ皿とフォークが当たる音がくすぐったい。

 初めて作ったガトーショコラを、私もガツガツ食べた。

「なぁ、恵里」

「何よ」

「俺、今ちょっとヤバい」

「は?」

 歩は立ち上がり、私の背後へ回ってきた。

 腹からぐいっと引っ張られ……あっという間に腕の中へ。

「ちょっと! 何すんのよ」

「ダメ?」

 そんな声で聞かれたら……ダメなんて言えないじゃない。

 ずるいやつ。

「ありがと。嬉しいよ」

 耳元で低い声。

 反則。

「だから違うってば」

「何でもいいよ」

 悠晴の顔が頭をよぎる。

 きっとクリスマス、歩も同じだったんだろう。

 同じ罪を、私も――。

 歩となら、犯せる。