渡すチャンスだって微妙だ。
バレンタインデーは6日後。
家庭教師は明日。
日にちが離れている。
当日は響子さんと約束しているだろうし、私だって悠晴と約束している。
翌週という手もあるが、遅れて渡すのもなんか嫌だ。
あんまり気合を入れるのも嫌だし。
いつもより早めに帰宅をすると、母がにやけていた。
「恵里、明日は早く返ってきなさいね」
「歩が来るからでしょ?」
「それもあるけど、一緒におやつ、作るわよ」
「は?」
母はスーパーの買い物袋を私に見せてきた。
中には……チョコレートやココアパウダーが。
「ちょっと早いけど、バレンタインよ。あんた世話になってるんだから、こういう時くらい歩君を労いなさい」
ナイス。
母との合作なら、都合がいい。