2月も二週目に入ると、女の子が色めき立つ。
教室の所々に似たような本が開かれているのを見かけるようになった。
次の日曜日はバレンタインデーなのだ。
「あー、どうしよう」
聡美も同じように本を広げて迷っている。
トリュフがいいか、生チョコがいいか……。
「去年と同じでいいじゃない。相手が違うんだから」
冷めた口調で言うと、聡美はチョコブラウニーのページを開いた。
「それもそうね」
街に出ればチョコレートの特設コーナーが設けられ、女ばかりがそこに集う。
モテない男は「業者の陰謀だ」なんて言うが、女子側としては楽しけりゃいいのだ。
「そういえば恵里、地味山にもチョコあげるの?」
「え? あー、まだ決めてない」
この際、あげるべきなのだろうか。
義理とも本命ともつかないチョコレートを。