「歩は彼女と別れる気はないみたいだし、だったらあたしも次に進みたいし……。だから、やや満足」

「やや満足って……どっかのアンケートじゃないんだから」

 呆れ顔の聡美に私は笑って見せた。

 この時、左胸の跡はもう大分薄くなっていた。

 歩め、明後日には消える、なんて言ってたくせに。

 あれから二日経ったけど、消えないじゃない。

 未練があるみたいで恨めしい。

 それを制服でガッチリ隠して、今日も悠晴と会う。



「恵里ー!」

 今日も街へ行くと、悠晴は嬉しそうに駆け寄ってきた。

 悠晴はなかなかの甘えっ子で、身長は私より15センチ以上高いのに子供みたいだ。

 しっかり手を繋ぎたがるし、人目を気にせず抱きついてきたりする。

 人気のない場所に行くと、

「恵里、チューして」

 と口癖のようにねだる。

 すぐに大人面をする歩とは正反対だが、彼は彼で好きだ。