寒さがビリビリと体中を攻める2月の朝。
教室に聡美の声が響いた。
「はぁっ?」
その間抜けな声に視線が集まる。
聡美はボリュームを絞り、私の声を覗く。
「もう一回説明しなさいよ」
「だから、歩と両思いだったんだけど、悠晴と付き合うことにしたの」
「それが意味わかんないのよ。両思いなら地味山と付き合えばいいじゃない」
聡美が不満そうな顔をする。
気持ちはわからなくはない。
私だって、初めは納得がいかなかったし。
「付き合ったよ、一晩だけ」
「ますます意味わかんない。何なの、その不倫みたいな言い方」
「だって不倫だもん」
大きくため息を落とした聡美は、もうお手上げ、という風な仕草をした。
「あんたはそれで満足なわけ?」
満足か不満足かと聞かれたら、不満足に決まってる。
でも何もないよりはいいと思って、そうしただけ。