こんなの、付けられたのは初めてだった。

 とりあえず胸元の閉まった服を着て、出かけたのは午後二時。

 家を出ると、ちょうど歩も家から出てきた。

「あ」

 二人の声が重なる。

 この間に流れる、微妙な空気。

「出かけるの?」

「うん」

 自然と並んで歩き出す。

 私はいつもの調子で食って掛かった。

「ちょっとあんた。跡なんてつけないでよ」

 胸元を指差し頬を膨らませる。

 歩は吹き出して言い返す。

「うるせーな。明後日には消えるよ」

「明後日? あんた意外に独占欲強いタイプなんだね」

「悪いかよ。お前だって、起きたらいなくなってたからビビったっつーの」

「起きなかったあんたが悪いんでしょ?」

「はぁ? 帰るなら可愛く帰るねって言ってから帰れ」

「マジ意味わかんないし」