気付けばもう誰もが寝静まった時間。
歩はベッドの中で、後ろから私を抱きしめてくれている。
「酷い男だよね、あんたって」
「何で?」
「あたしの気持ち知ってて、からかってたじゃない」
腕の締りが強くなり、耳元に唇で触れられた。
その状態で笑うもんだから、ゾクゾクする刺激から逃れることもできない。
「笑うな」
「ごめんごめん。それはね、俺なりのささやかな復讐」
「復讐? あたし、何かしたっけ?」
正直、思い当たりすぎてわからない。
こないだ最後のクッキーを横取りしたから?
いやいや、そんなしょうもない理由で気持ちを弄ばれたんじゃたまったもんじゃない。
歩の唇は肩へ移った。
「お前は酷い女だな。人のこと嫌いって言っておいて、忘れてんの?」
「え?」
そんなの、しょっちゅう言い合ってるじゃん。