「響子さんと別れる気がないなら、キスなんてしないでよ。ガマンしてよ」
「ごめん」
謝罪の言葉を聞いて涙が出てきた。
「でも今、抑えてるつもり」
明日は悠晴にOKの返事をする予定だったのに。
時間をかけて、微かな希望を捨てる覚悟ができたというのに。
何なの、この状況。
「あたし、どうすればいいのよ……」
鼻声になった私を申し訳なさそうな顔で見る歩。
「俺も、どうすればいいんだろうな」
悲しみや悔しさ、怒り、嫉妬などの悪い感情が入り混じって、私の心はどんどん捻くれていった。
暫く無言の状態が続く。
歩が響子さんと別れたくないなら……。
「あたし、悠晴と付き合う」
歩は複雑な表情でこちらを見た。
「そうか。それが一番平和的だよな」
私は首を横に振った。