唇はすぐに離れた。

「取れないよ、そんな責任」

 手の甲で唇を押さえ、「これ以上はダメ」の合図。

 納得いかない。

 どうしてキスしたの?

 好きって言われて嬉しかった。

 でも、浮気って言われて悔しくなった。

 あくまで本命は響子さん。

 そんなの、やっぱり惨めなだけじゃない。

 男はみんな浮気する生き物だってよく言われるけど、それは卑しい男だけだと思っていた。

 歩みたいなカタいタイプも例外ではなかったらしい。

「今ならまだフリーだろ?」

 口に当てた手を引っ張られ、また口元があらわになった。

「そうだけど、そうじゃなくて……」

「じゃあ、何?」

「こんなの、納得いかない」

 私の言葉を無視して、歩は私をベッドに放る。

 上に跨った歩が、メガネを外して床へ投げ捨てた。

「納得いかないのは俺の方だ」

 仕草と低い声に、心が掻き乱される。

 色気に卒倒しそうだ。