押さえられた両腕の力が抜けた。

 歩に握られたまま手を下ろす。

「はぁ……? 意味わかんない」

 情けなく涙が溢れた。

「はっきり言えばいい?」

 歩から視線を逸らせない。

「恵里が好きだってこと」

 顔が近づいてきて、額と額がぶつかった。

 心臓は壊れそうなくらいフルボリューム。

 腕から離れた歩の温かい手は、私の頬を支えている。

「責任取れ」

 心臓がなかなか落ち着かなくて、苦しい。

「何の責任よ?」

「俺を浮気させた責任」

「何それ……」

 視線に耐えれなくなってキュッと目をつぶると、ここぞとばかりに唇に何かが触れた。

 それが歩の唇だと、目を開けなくてもわかる。

 全身が痺れるような感覚がして、下半身に力が入った。