ただ、恥ずかしい。

 恥ずかしくて、ひざに埋めた顔が上げれない。

 チューは本当だった。

 だけど唇を奪われたのは、むしろ私の方だった。

 奪わせたって言う方が正しいのかもしれないけれど。

「何かコメントしろよ」

「できないよ……」

 気持ちはバレてるし、チューはしてるし。

 もうわけのわからない感情に、頭がクラクラした。

 歩の手が私の頭部を持ち上げる。

 茹でダコ並に赤くなった顔を晒すことになる。

 私は恥ずかしさのあまり、ヤケになった。

「あんた、あたしの気持ち知っていながらずっとからかってたわけ?」

 腕を振り上げ、ポカポカと彼の胸板を叩く。

「あたしのこと嫌いだからって、面白がってたの?」

 両腕を掴まれたが、振り続けた。

 押さえられたため胸板には当たらなかった。

「違うよ」

「違わない!」

「あれから俺、恵里のことが気になってしょうがねーんだよ」