一月ぶりに入った歩の部屋は、雰囲気が変わったように感じた。
でもそれは照明のせいでも、机に広げられた教科書類のせいでもない。
この部屋の主、歩が醸し出すオーラのせいだ。
黒縁のオシャレなメガネをかけている歩は、風呂上がりのいい匂いを放っている。
メガネの奥に見える歩の目は、私が西山家に入ったときからおかしかった。
ただならぬ雰囲気に危機感さえ感じるほどだ。
部屋に通された私は、縮こまって適当な場所にあぐらをかいて座った。
「ほら」
手渡されたのは缶コーラ。
「ありがと」
歩も同じものを持って、私の向かいに座った。
プシュッ
開封音を響かせ、一口注ぐ。
ピリピリと喉を刺激して胃へと落ちていった。
「で? あいつへの返事、どうするの?」