「恵里がそんなに悩むとはねぇ」

 聡美はピアスをいじりながらしみじみと窓の外を見ている。

「歩には好きなやつを見返せとか言われるし」

 ぽつりと漏らした言葉に、聡美の視線が返ってきた。

「何それ? 地味山も知ってるわけ?」

「うん。告られたって言った。彼女持ちの好きな人がいるってのも話した」

「それで?」

 顔を起こし、聡美と目の高さを合わせる。

 彼女は真剣な顔をしていた。

「あいつ、前に好きな子に嫌いって言われたらしくてさ。それで頑張って色気付いちゃったらしいのよ。だから、あたしもその好きなやつを見返せ、みたいに言われた」

 ふーん、と私の言葉を噛み締めるように言うと、ふっと笑う。

「なるほど。地味山は見返したからね」

「誰を?」

「さあね」

「なによそれ?」

 そこで担任が教室にやってきて、聡美は自分の席に帰って行った。