床に放置していたジャケットを着る音がする。

「じゃ、また来週、七時からね」

「うん」

 そのまま彼は部屋を出て行った。

 下から母の甲高い声が聞こえる。

 私はそれが聞こえないよう、掛け布団を頭からかぶった。




 そして始まった新学期。

 新年の挨拶が飛び交う教室で、私は聡美とコソコソ話をしていた。

「え? 告られたの?」

「うん」

「で? どうすんの」

「決めてない」

 聡美は真剣に話を聞いてくれて、一緒に悩んでくれるありがたい存在だ。

「顔は恵里の好みだよね、あのチャラ男」

「チャラ男って言わないでよ」

「へえ、結構気に入ってんじゃん」

 聡美は私の反応から、大体の気持ちを汲み取る能力があるらしい。

 北高校だけど、結構賢いと思う。