面と向かって言われたわけじゃないけどさ。

 たまたま女子同士で話してるの、聞いたんだ。

 直接言われるよりも陰で言われる方が真実味があるだろ?

 まあ、俺も地味だったし、自分に自信なんてなかったけど……さすがに効いたよ。

 それが悔しくて格好にも気を付けるようになったし、今思えばいい薬になったと思う。



 歩は話し終わると、上から私の顔を覗き込んだ。

 彼の影が私にかかる。

 私は視線を合わせない。

 合わせられない。

「どうしてそんな話したの?」

「見返せよ、そいつのこと」

「は?」

「お前を選ばなかったこと、後悔させてみろよ」

 あんたがそんなこと言わないでよ。

 私は格好だって、普段から気にしている。

 響子さんを……越えれる自信はない。

 昔の片思い相手にも嫉妬をしてしまう。

 天邪鬼、復活。

「簡単に言わないでよ。ありきたりだけど、できたらやってるっての」

「まあ、そうだな。ごめん」

 影は引っ込んでいった。