歩はにやけ顔のまま言った。

「ま、それもいいんじゃない?」

 その一言が天邪鬼を打ち倒した。

 私は少し涙目になって、歩に背を向けて寝転んだ。

 わかってた。

 わかってたけども。

 軽く言われると……片思いの惨めさを思い知らされる。

 パタン

 歩が携帯を閉じた音がした。

「じゃー俺帰ろうかな」

「うん……」

 私の声の異変を、彼は見逃さなかった。

「恵里……泣いてんの?」

 ベッドが揺れ、歩が腰掛けたのがわかる。

 私は壁を向いたまま、反応せずにいた。

「俺さ、好きな女に嫌いって言われたことがあるんだ」

 突然語りだす歩。

 私は黙って耳を傾けた。