もう少しで家につくという頃、これから出かける歩と遭遇した。

 忘れなきゃと思った矢先だったのに。

「あれ? 恵里じゃん」

「あけおめー」

「おめでとう」

 爽やか少年は今日も髪型を整えており、ゴキゲンな表情で誰に会うのか想像ができた。

 まったく、憎たらしい。

 憎たらしいのに、やっぱ好き。

 好きだけど早く忘れたい。

「今日はやけに帰りが早いな。初詣か?」

「うん。春樹君も一緒だったの。歩はこれから?」

「そう。つーか春樹に変なこと言ってないだろうな」

「言ってないよ。こっちが恥ずかしいし」

 そうだよな、なんて笑う歩にきゅんとした。

 ちくしょう、切ない。

「ねえ、あれ……ホント?」

「何が?」

「チューしたっていうの」