「ま、でも歩が怒って恵里ちゃんと帰ったわけじゃないならそれでいいんだ」
春樹君はきっといい弟なんだと思う。
響子さんのこと心配して私を呼び止めたのだ。
歩が春樹君にも言うなって言った理由がよくわかった。
「あと、悠のことなんだけど」
「悠晴?」
「うん。あいつ、恵里ちゃんのこと気になってるみたいだよ」
なんとなく気付いてた。
「え、あー……そうなんだ」
「ま、考えてやってよ」
春樹君はいいやつだ。
友達思いで、家族思い。
みんなが幸せになる方向に進めようとしている。
私なんて、気持ちを明かしてしまえば悪者に違いない。
歩への気持ち、早く忘れなきゃ。
春樹君の言葉に急かされた気がした。